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ローヤルエンジニアリング全国専門学校生対象建築学生コンペ

入賞者発表(2025.05.24 )

〇最優秀賞 「和紙のトイレ」

東京日建工科専門学校 今琉惺

〇審査員賞

・水登賞:「Gathering Place」

   仙台工科専門学校 遠藤桜 大内花純

・本多賞:「皆、流動する」

   豊田工業高等専門学校 建築学科 戸軽大智

 

・ローヤルエンジニアリング賞 :「いつもの西川 ~飾らない姿と触れ合うトイレ~」

   青山製図専門学校 佐野彰彦

・ローヤルエンジニアリング賞 :「自然のしずく」

   鹿児島工学院専門学校 建築デザイン学科 上村麗子

最優秀賞 今琉惺さん

東京日建工科専門学校

遠藤桜さん 大内花純さん
仙台工科専門学校 

上村麗子さん

鹿児島工学院専門学校



最優秀賞 「和紙のトイレ」

  東京日建工科専門学校 今琉惺

 

講評

西川町の地域的背景を丁寧に調査し、それを設計に取り込んだ提案と感じました。提案にある「月山和紙」は、豪雪地帯である西川町の冬季の副業として生まれた「西川和紙」を源流に持ちます。後継者不足の中で一度衰退しつつも、「自然と匠の伝承館」にて「月山和紙」として復活したという歴史を踏まえた素材の選定に、地域への深い理解と敬意が読み取れました。

本提案では、国産の楮を使用し、化学的な漂白を行わず、手漉きにこだわって作られている月山和紙の特性――繊維の揺らぎやムラが光を柔らかく透過する点――を活かし、光のデザインへと展開している点が非常に優れています。

 

ランプシェードのように和紙を用いたトイレ空間は、白銀の雪景色に優しい光を灯し、国道を通り過ぎる車窓から、冬季の公園に新たな魅力をもたらす「名所」としての可能性を感じさせます。(本多)


水登賞:「Gathering Place」

   仙台工科専門学校 遠藤桜 大内花純

 

講評

「魅力全力発信トイレ」というキャッチフレーズに惹かれました。
その名の通り、トイレという機能に加え、風景の中で存在感を放つ建築としての提案に仕上がっています。雪に覆われた風景の中に現れるドーム屋根は、大きなかまくらのような印象を与え、来訪者の記憶に残るランドマークになるでしょう。

 

また、本提案では、屋外の公衆トイレにおいてこれまであまり活用されてこなかった「出入り口のまわり」に着目し、そこを人が集まり、待ち、光があたる場として再構成している点や、積雪地ならではの設計的配慮も随所に見られ、地域に根差した建築のあり方が丁寧に考えられていることが伝わってきました。きっと、日常の経験や、学校での指導などで、意識してきたことなのかと審査中に感じました。(本多)


本多賞:「皆、流動する」

   豊田工業高等専門学校 建築学科 戸軽大智

 

講評

地域の歴史にしっかりと目を向けた提案です。

かつてこの地域に存在した山形交通三山線(1974〈昭和49〉年廃線)について触れ、現在も一部区間において線路跡が遊歩道や自転車道として整備されていることに注目している点は、地域の記憶と空間を丁寧に読み解こうとする姿勢が感じられます。

建築として最も魅力的だと感じたのは、雪国の気候を肯定的に捉えた空間構成です。建物を覆うようにかけられた大きなルーバー状の庇は、夏には木陰を生み出し風が抜ける開放的な空間をつくり、冬には雪が積もることで隙間が埋まり、風を適度に遮断して内部環境を守る構造になっています。


特に印象的に感じたのは、積もった雪を透かして風景を見るという視点です。雪をただの厄介な自然条件としてではなく、設計の一部として取り込んだ美しい発想だと感じました。

トイレと機械室を機能的に中央にまとめ、その上から大きく覆うような構成も、雪に覆われる地域での合理的かつ柔らかなデザインアプローチと言えるでしょう。実際の運用には床暖房やロードヒーティングなどの設備的配慮が求められるとは思いますが、建築が気候と対話しているような提案は好感が持てます。

また、「人のためだけでなく、鳥のためにもなる建築」という視点に、設計者の優しいまなざしが感じられ、空間に宿る物語性をより豊かなものにしています。

※今回応募が少なかった高等専門学校の作品です。専門学校生対象とタイトルに使ってますが、高専生大歓迎です!(本多)


ローヤルエンジニアリング賞 :
「いつもの西川 ~飾らない姿と触れ合うトイレ~」

   青山製図専門学校 佐野彰彦

 

講評

非常にダイナミックな構成が印象的な提案です。

睦合公園は、サッカーやテニスが楽しめるスポーツ公園として利用されており、その場の特性を活かし、眺望を確保した展望スペースと、山形らしい芋煮会に対応する調理室を備えたトイレとして計画されている点を評価しました。

 

展望台・調理室・トイレといった構成要素は、地震などの災害時にも直感的に役に立つ構成となっており、平時と災害時の両方で地域に寄与する「フェーズフリー」な発想が感じられます。

内部空間も非常に魅力的です。傾斜した壁面に切り取られた風景は、これまでの西川町にはなかった新たな視点をもたらし、

場所の魅力を再発見させてくれる力があります。構造と空間の関係性を利用しながら、利用者に対して印象深い体験を提供しようとする意図が明確に伝わってきました。

構造美と実用性、そして地域文化への配慮が共存する優れた提案として選びました。(本多)


ローヤルエンジニアリング賞 :「自然のしずく」

   鹿児島工学院専門学校 建築デザイン学科 上村麗子

 

講評

本提案は、与えられた課題文の趣旨を最も誠実に読み解いた上で構想された提案です。
ローヤルエンジニアリングの考え方、つまり、トイレの汚水を濾過・分解し、再利用するシステムを導入することで、川に流れる水を美しく保ち、かつ資源を循環させるという環境負荷の少ない仕組みを建築に丁寧に反映しています。

 

建物形状は、2枚の葉が広がるような屋根形状を採用し、雨水を一点に集約して周辺の植栽への散水に活用する仕組みを備えている点も好感が持てます。

※ローヤルエンジニアリングのシステムでは、雨水を手洗いに濾過、殺菌して利用します。

 

さらに、外観そのものが水の循環や自然との共生を視覚的に想起させる造形であることも、地域の人々や訪問者にとって、環境配慮の意識を喚起する装置として機能する可能性を持っています。

 

建築は使われるだけでなく、語りかける存在でもあるという点において、本提案はその力可能性を持っています、惜しいところは、人の目線でも2枚の葉の様に見えるデザインにするか、水の流れを意識できるデザインにできると、さらに良くなったでしょう。(本多)


2025課題文

ローヤルエンジニアリングは、

建築設備の企画・設計・施⼯・保守まで⼿がける「快適環境創造会社」です。

 

近年、サスティナブル事業にも⼒を⼊れ、特に循環トイレの開発研究を進めています。

 

このコンペは、全国の専⾨学校の皆さんの⽇ごろの学びと成果を発揮し、実⼒を試す機会としてほしいと考え企画しました。

 

テーマは、

「公園に設置する循環式トイレ」

 

給排⽔インフラの必要ない循環式トイレは、汚⽔を微⽣物分解や濾過をすることで、再⽣⽔としてトイレに再利⽤でき、いままで設置が難しかった場所に綺麗な⽔洗トイレが設置できます。

 

敷地は⼭形県⻄川町の公園に設定しました。

豊かな⾃然を⽣かしたアクティビティと豪雪で有名な⽉⼭がある⻄川町。

 

そんな場所に建つ公共トイレとしてふさわしい外観デザインを募集します。

 

未来を担う皆さんの挑戦を、私たちは全⼒で応援します!

環境に優しい建築で、持続可能な社会を共に⽬指しましょう。

たくさんのご応募、お待ちしています!

 

 


1.応募詳細

テーマ  「公園に設置する循環式トイレ」

 

■所在地 

山形県西川町の公園に設置するトイレ

※応募登録いただいた方には場所の詳細をお送りします。

 

■設計条件

・バリアフリートイレ(2.2m×2.2m、天井高さ2m以上)

・上記トイレの機械室(2.2m×2.2m×高さ2m)微生物土壌分解装置のスペース

※上記2室を含む外観のデザインを自由に考えてください。

※2つの部屋は別々の場所でもかまいません。配管で汚水と再生水が循環します。

 

■応募資格 

2025年3月31日時点で、専門学校、高等専門学校、高校に在籍する生徒

■登録期限

2025年3月31日

■作品応募期限

2025年4月4日

 

■審査員

菅野大志 山形県西川町 町長

本多 健 建築家  みらい観光デザイン機構代表理事   

水登健介 ローヤルエンジニアリング 代表取締役 ※敬称略

 

■賞 :最優秀賞1作品 各審査員賞6作品程度

 

■賞金:10万円(最優秀賞)

 

■主催:ローヤルエンジニアリング株式会社  /  一般社団法人みらい観光デザイン機構

 

■協力:西川町 建築資料研究社 

 

■企画:株式会社HOOP 


西川町 睦合公園

睦合公園の桜並木

睦合公園のトイレ